コントロールが難しい喘息とは?
~重症喘息~
【監修】慶應義塾大学医学部呼吸器内科 教授 福永 興壱 先生

近年、喘息の中には、吸入ステロイド薬が効きにくい喘息があることが分かってきました。
もしあなたが吸入ステロイド薬をきちんと続けているにも関わらず、咳や喘鳴、息苦しさなどの喘息の症状があったり、発作を繰り返してしまっている場合、あなたの喘息はそのようなタイプの喘息かもしれません。症状(発作)が起きるたびに、一時的に薬で抑えることを繰り返していても、喘息の大もとの原因を改善することはできません。あなたが症状(発作)を繰り返してしまう理由について、もう一度考えてみませんか。

症状(発作)が出るのは、
気道炎症が潜んでいるからです

喘息の症状(発作)は、水面上に出ている「氷山の一角」に過ぎません。その下には気道炎症という「大きな氷山のかたまり」が潜んでいます。気道炎症とは、外部から異物(ウイルス、花粉など)などが侵入してきたときに、それらを排除しようとして患部が赤くなったり、腫れたりする反応です。喘息の治療では、何よりもまず、この気道炎症を改善することが重要です。

症状(発作)と気道炎症の関係 症状(発作)と気道炎症の関係

喘息に関係する炎症「2型炎症」
について知りましょう

炎症とは、外部から異物などが侵入してきたときに、それらを排除しようとして患部が赤くなったり、腫れたりする反応です。炎症のタイプにはいくつか(1型~3型)ありますが、そのうち、喘息に関係する炎症は主に「2型炎症」です。
2型炎症とは、2種類の細胞から放出される体内物質「インターロイキン(IL)」や、インターロイキン(IL) によって活性化された細胞から放出される「IgE」とよばれる体内物質が、気道炎症の最前線で働いて起こる炎症です。外部からの刺激によって、2種類の細胞(Th2細胞およびILC2)が活性化すると、インターロイキン(IL)を放出します。インターロイキン(IL)は、気道に直接的に作用したり、炎症にかかわる細胞を活性化することで、気道炎症を引き起こします。その結果、気道はせまく、過敏になります。こうして症状(発作)が引き起こされます。

2型炎症によって気道炎症が起こるしくみ2型炎症によって気道炎症が起こるしくみ

2種類の細胞(Th2細胞およびILC2)からインターロイキン(IL)が放出されている限り、気道炎症は続きます。

吸入ステロイド薬だけでは、「2型炎症」をおさえられない場合があります

吸入ステロイド薬は、Th2細胞の働きを弱めて、Th2細胞からのインターロイキン(IL)の放出を止めます。しかし、2型炎症のもう一方の司令塔であるILC2は吸入ステロイド薬に強いため、ILC2が活発に働いている2型炎症では、吸入ステロイド薬を使ってもILC2の働きが弱まらず、インターロイキン(IL)の放出が続くことが、近年の研究によって明らかになってきました1,2)

1) Kabata H et al. Nat Commun. 2013;4:2675 2) Liu S et al. J Allergy Clin Immunol 2018;141:257-268

吸入ステロイド薬を使っても「2型炎症」が起こり続けるしくみ吸入ステロイド薬を使っても「2型炎症」が起こり続けるしくみ

吸入ステロイド薬が効きにくいILC2からインターロイキン(IL)が放出されている限り、気道炎症は続きます。もし吸入ステロイド薬をきちんと続けているにも関わらず、咳や喘鳴、息苦しさなどの喘息の症状があったり、発作を繰り返してしまっている場合、もしかするとあなたの気道ではこのようなことが起きているかもしれません。

吸入ステロイド薬が効きにくい喘息にも効果が期待できる、
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気道炎症を放っておくと、治療は
ますます難しくなります

薬で一時的に症状(発作)が良くなったとしても、気道炎症を放っておくと、気管支の壁は厚く硬くなり、気道が狭くなってしまいます。その結果、また症状(発作)を繰り返すという悪循環におちいってしまいます。この悪循環が続くと、喘息の治療はますます難しくなってしまいます(喘息の難治化)。喘息の難治化を防ぐためには、気道炎症を改善することが重要です。

気道炎症が続くことによる悪循環気道炎症が続くことによる悪循環

発作治療薬や経口ステロイド薬を
使うときに気を付けること

発作治療薬とは

症状(発作)が起こったときに、症状(発作)を一時的におさえるために使う薬です。

しかし、気道炎症は残ったままです

氷山の一角を壊して一時的に見えなくしても、水面下の大きな氷山のかたまり(気道炎症)は残ったままです4,5)

発作治療薬による治療のイメージ 発作治療薬による治療のイメージ
発作治療薬の使い過ぎによる大きな発作のおそれ発作治療薬の使い過ぎによる大きな発作のおそれ

経口ステロイド薬の特徴

経口ステロイド薬は、気道炎症をおさえるのに有効です。
炎症をおさえる作用が強力なため、吸入ステロイド薬などで治療しても効果が不十分な場合に使われることがあります。

全身への作用による副作用に注意

経口ステロイド薬は、吸入ステロイド薬と違って全身に作用を及ぼすため、さまざまな副作用が起こるおそれがあります。

必要最小限の量を短期間だけ使うのが原則

経口ステロイド薬は、必要最低限の量を短期間だけ使うのが原則となっており、長期にわたってむやみに使うことは推奨されていません6,7)

不適切な治療は、喘息をかえって悪化させたり、思わぬ副作用を招いたりするおそれがあります。

経口ステロイド薬による注意すべき副作用の例 経口ステロイド薬による注意すべき副作用の例

不適切な治療は、喘息をかえって悪化させたり、思わぬ副作用を招いたりするおそれがあります。

日本アレルギー学会:アレルギー総合ガイドライン 日本アレルギー学会:アレルギー総合ガイドライン

喘息の症状(発作)に加えて、鼻の症状はありませんか?

鼻炎は上気道の炎症、喘息は下気道の炎症によって起こります。

喘息患者さんは、鼻炎を合併しやすいことが知られています。
空気の通り道である気道は、鼻・口の入り口から肺の中の気管支までつながっており、上気道と下気道に分かれています。
喘息と鼻炎は、いずれもひとつのつながった気道の中で炎症が起きることによって発症するため、合併している方が多いと考えられています。 鼻炎を合併していると、喘息が重症化しやすい場合があるため、注意が必要です。 

鼻炎は上気道の炎症、喘息は下気道の炎症によって起こります。

喘息患者さんの鼻炎

喘息も鼻炎も、気道炎症という共通の原因によって起こるため、喘息患者さんでは鼻炎を合併していることが多いと考えられています。

・主な鼻炎の症状

主な鼻炎の症状 主な鼻炎の症状
アレルギー性鼻炎

・アレルギー性鼻炎

花粉やハウスダストなどの原因物質(アレルゲン)を吸い込むことによって鼻の粘膜に炎症が起こる病気です。成人の喘息患者さんの40%以上がアレルギー性鼻炎を合併していると言われており、喘息悪化の危険因子であることが知られています8)

アレルギー性鼻炎

慢性 副鼻腔 ふくびくう

風邪のウイルスや細菌、アレルギーなどによって、鼻腔の周囲にある空洞(副鼻腔)の粘膜に炎症が起こる病気です。喘息悪化の危険因子であることが知られており、慢性副鼻腔炎が重症になるほど、喘息のコントロール状態も悪くなると言われています9)

慢性副鼻腔炎 慢性副鼻腔炎

慢性副鼻腔炎では、鼻の中に 鼻茸 はなたけ とよばれるポリープができることがあります。鼻茸は、鼻や副鼻腔の壁(粘膜)が炎症によって腫れて垂れ下がり、キノコ状になったものです。慢性副鼻腔炎患者さんのうち、10~20%に鼻茸ができているといわれています。

鼻茸 鼻茸
喘息予防・管理ガイドライン2018

喘息治療の基本は、気道の炎症をおさえることです。吸入ステロイド薬は気道の炎症をおさえますが、もしあなたの喘息が吸入ステロイド薬が効きにくいタイプの場合、ご自身の治療法を見直す必要があるかもしれません。

もう一度、ご自身の喘息について考えてみましょう 吸入ステロイド薬が効きにくいタイプの喘息にも効果が期待できる、新しい喘息治療薬についてはこちら
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