& magazine Vol.7

早期の適切な治療で自分らしく過ごせる日々を

小児のアトピー性皮膚炎治療は、お子さまと保護者の方の試行錯誤の連続ではないでしょうか。皮膚科医の視点からお話しいただく治療へのアドバイスをご紹介します。

江藤 隆史 先生

江藤 隆史 先生

あたご皮フ科 副院長
1977年、東京大学工学部計数工学科卒業。1984年、東京大学医学部卒業。
1984年、東京大学皮膚科助手。1989年、ハーバード大学病理学教室研究員。1992年、東京大学皮膚科講師・病棟医長。1994年、東京逓信病院皮膚科医長。1998年、東京逓信病院皮膚科部長。2015年、東京逓信病院副院長。2015年より現職。

小児期からアトピー性皮膚炎と付き合っていると、症状があることに慣れてしまい、治療への意欲が低くなってしまうことがあります。
成長とともに少しずつ行動範囲が広くなり、自分でできることが増えていく時期にある小児期の患者さんでそのような状態が長く続くと、かゆみによる睡眠不足や日中の活動などへの小さな影響が徐々に広がって、その後の人生にも及ぶ可能性があります。
また、アトピー性皮膚炎で偏見や差別を受けた患者さんでは、アトピーへの負担感やストレスが強く、メンタルサポートを必要とする割合が多いという報告もあります。
そのため、アトピー性皮膚炎では早期に適切な治療を行うことが大切です。まずは症状がある状態を「普通」と思ってしまっている患者さんに、症状がない状態を経験してもらうことを目指していきます。

アトピー性皮膚炎は、少しでも早く“ 消火”をすることが重要

医師と相談して、お子さまに合った治療を選択

小児期のアトピー性皮膚炎では、見た目を気にすることや精神的ストレスなどから不登校や家庭内のいざこざなどの問題が生じるケースがあります。その場合は、治療法の見直しも考慮に入れると良いかもしれません。 ここ数年で、小児の患者さんでも使用可能な治療選択肢が増えてきています。またライフステージによって合う治療法は変わる場合もあります。その時々のお子さまに合う治療法について医師と相談してみましょう。

少しでも早い時期に治療を始めて重症化を防ぐ

アトピー性皮膚炎の治療は、消火活動に例えられることがあります。症状が軽い早期のうちに適切な治療を行うことで、その後の重症化を防ぐことができます。乾燥やかゆみなどの症状が出ていたら少しでも早く治療を開始しましょう。

小さな成功体験を積み重ねることでお子さまのモチベーションを高める

小さな成功体験を積み重ねて、モチベーションを高める

お子さまの治療意欲がなかなか続かないときは、“ジグソーパズル作戦” がおすすめです。「どのパーツを治したい?」とお子さまに尋ね、それが額なら、「じゃあ毎日、おでこだけ頑張ろう」と決めます。できたら必ず褒めてあげてください。ジグソーパズルもそうですが、一部でも形(キャラクターなど)ができてくると、全体を完成させたくなります。治療も同じです。小さな成功体験(= 局所の治療)を積み重ねることで、お子さまのモチベーションを高めていきましょう。

ときには医療者が、親子関係のクッションに

親と子では、治療への意欲や、病気に対する悩みが異なっていることは少なくありません。親子関係がギクシャクしているときには、医師や看護師が介入をすることで、お子さまと一緒に“良くなったら何がしたい?” など問いかけつつ治療のゴールを設定するといいかもしれません。

思春期に入ったら、保護者自身が当時の自分を思い出してみる

思春期(反抗期)はあまり口出しせず、じっくり待つことも大事

保護者自身も記憶にあると思いますが、思春期を迎えると、ときには反抗心が芽生えることもあります。こういうときにお子さまに向かって、スキンケアや治療のことをあれこれ言っても聞く耳を持ってくれません。 “この時期はしょうがない”と、どんと構えて、待つことも大切ですよ。

きちんと適切な治療をして、「良い状態を長くキープすること」

江藤 隆史 先生

それがお子さまらしく過ごせる日々に必要な目標です。小さな成功体験を大切に積み重ねることが達成の秘訣です。

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