アトピー性皮膚炎の特性を知り、患者さんや保護者の方が病気や治療と正しく向き合えるように、小児アレルギー専門医・大矢先生からお話をうかがいました。

大矢 幸弘 先生
名古屋市立大学環境労働衛生学 特任教授/藤田医科大学医学部 総合アレルギーセンター 総合アレルギー科 客員教授/国立成育医療研究センター シニアフェロー
名古屋大学小児科、国立名古屋病院小児科を経て、1995年、国立小児病院アレルギー科へ。2002年、国立成育医療センターアレルギー科医長、2018年、国立成育医療研究センター アレルギーセンター長、2024年より現職。
アレルギーマーチ

独立行政法人環境保全機構 ERCA(エルカ). 「ぜん息悪化予防のための小児アトピー性皮膚炎ハンドブック」
(https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/ap024.pdf). 2009. p3をもとにサノフィ株式会社が改変
監修:名古屋市立大学環境労働衛生学 特任教授/藤田医科大学医学部 総合アレルギーセンター 総合アレルギー科 客員教授/
国立成育医療研究センター シニアフェロー 大矢幸弘先生
アレルギーの始まりがアトピー性皮膚炎
赤ちゃんのなかには「アレルギーになりやすい体質」の子がいます。アレルギーは一般的にアトピー性皮膚炎(以降、アトピー)から始まり、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎と進んでいくことが多く、これを「アレルギーマーチ」といいます。アレルギーになりやすい体質のお子さまは、このアレルギーマーチに進みやすいのです(図1)。最初のアトピーで適切な治療を行うことで、その後のアレルギーマーチを未然に防ぐこと、発症しても軽症に抑えることがとても大切です。
![[図1]1歳でアトピーを発症して13歳まで継続した患者さんがほかのアレルギー疾患を発症した割合*1](/assets/img/kayumi/atopic/magazine/vol7_doctor/doctor_img3.png)
※1 国立成育医療研究センターで登録された1,550人の新生児のうち、13歳の患者468人に対してアンケート調査と血液サンプルの採取をした。本研究には①後のアレルギー発症との関連がみられる乳幼児期の湿疹に焦点を当てたため、表現型の設定が限られた、②大規模コホートではなかったなどの限界があった。
※2 IgE成分感作:Immuno CAP ISACを用いて112以上のアレルゲンコンポーネント解析を行った。
Kiguchi T et al. Allergol Int 2023; 72: 107-115 より作図
アトピーがアレルギーを強固に
本当はアトピーなのに「乳児湿疹」として見逃されている例が少なくないのが現状です。かゆみがある湿疹が続く場合は一度専門医に相談してみましょう。次の食物アレルギーが出てきてアレルギーの地盤が固まる前に少しでも早く治療をしておきたいですね。
かゆみゼロ、皮疹ゼロを目指す
アトピーでは自然に良くなっていく患者さんもいます。反対に、なかなか良くならず長く悩んでしまう患者さんもいます。そういう患者さんでも適切な治療をすれば良くなるのがこの病気です。適切な治療を続ければ、かゆみゼロ、皮疹ゼロを目指すこともできるのです。
治療継続のためのコミュニケーション
日々のケアを継続することは、かなりの負担です。保護者の方が薬や保湿剤を塗っている間は良くても、成長してお子さまが自分で塗るようになるともっと管理が難しくなります。それもアトピー治療の難しいところです。また、アトピーでは患者さん本人だけでなく、ご家族の負担や心労も大変大きい(図2)ため、少しでも早く適切な治療を始めることが重要です。
アトピーの治療では、保護者の方とお子さまとのコミュニケーションにも工夫が必要となってきます。
![[図2]アトピーが患者さんと保護者に及ぼす影響*2](/assets/img/kayumi/atopic/magazine/vol7_doctor/doctor_img4.png)
1) Ohya Y et al. Pediatr Dermatol 2023; 40: 851-856 ©2023 The Authors. Pediatric Dermatology published by Wiley Periodicals LLC. Reproduced with permission of John Wiley & Sons Inc.
本調査はサノフィ株式会社及びRegeneron Pharmaceuticalsの資金提供により実施された。
2) Saeki H et al. J Clin Med 2023; 12: 2988
本調査はサノフィ株式会社及びRegeneron Pharmaceuticalsの資金提供により実施された。
1.病気の特性、治療法を理解する
アトピーは良くなったり悪くなったりを繰り返しながらどんどん悪くなっていくことがありますが、適切な治療を受けると食い止めることができます。お子さまが自分でケアを始める前に、「いま」食い止めることの重要性を家族みんなでしっかり理解して、治療法についても事前にしっかり話し合っておきましょう。
2.お子さまの自己効力感を高める
できなかったことよりも、できたことや良い点を褒めてあげて、「自分にもできる」という気持ちを高めていきましょう。
3.治療の目標を立てる
ご家族で話し合って、「アトピーが良くなったらやりたいこと、行きたいところ」などを決めてみてはいかがでしょうか? 治療の励みになります。
最後にもう一つ、軽症のうちに早期に治療をするほうが、のちの負担が少なくすむことを覚えておいてください。
早期介入がアトピー性皮膚炎治療のカギです

アトピー性皮膚炎では新しい治療選択肢も登場しており、早期に適切な治療を行えば、かゆみゼロ、皮疹ゼロの状態、寛解を目指せるようになっています。
こちらのインタビューは「& magazine」Vol.7に掲載しております。
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Vol.7
(8.9MB)