& magazine Vol.2

アトピー性皮膚炎の患者さんと医師のギャップ調査

“医師に伝えること” と “改善すること”とに密接な関係

中原 剛士 先生

中原 剛士 先生

九州大学大学院医学研究院 皮膚科学分野 教授

医師と患者さんの間にある
認識のギャップを調査

2017年8月に調査パネルとして登録されている患者さんと医師を対象に、インターネットによるアンケート調査を実施しました。

調査に参加した患者さん
  • 調査に参加する1週間前の段階で、アトピー性皮膚炎の皮疹があった
  • 現在、アトピー性皮膚炎の治療のために医療機関に通院している
  • ステロイドを塗っている(または塗った経験がある)

上記の3つの条件全てに
当てはまっている患者さんです。

調査に参加した医師
  • 調査に参加する前の1ヶ月間で中等症以上の15歳以上のアトピー性患者さんを10名以上診療している病院に勤務している医師
  • 調査に参加する前の1ヶ月間で中等症以上の成人(15歳以上)のアトピー性患者さんを20名以上治療しているクリニックを開業している医師

上記のどちらかの条件に
当てはまる医師です。

調査した内容

以下の内容について、アトピー性皮膚炎の患者さんと医師の両方に調査しました。

  • アトピー性皮膚炎の重症度はどのくらいか?
  • アトピー性皮膚炎による生活の質や精神面への影響
  • 治療の満足度
  • 治療についての確認や説明の十分さ

中原剛士ほか. 日本皮屑科学会雑誌 2018;128 (13)
:2843-2855

アトピー性皮膚炎が患者さんの生活の質や精神面にどのくらい影響しているかについての医師と患者さんのギャップ

患者さんがアトピー性皮膚炎は生活に「非常に影響がある」または「やや影響がある」と回答した割合は、医師が「非常に影響がある」または「やや影響がある」と推測して回答した割合よリも高い結果となリました。
医師と患者さんの生活への影響に対する認識の差は、軽症や中等症患者さんで大きいという傾向もありました。

アトピー性皮膚炎による日常生活への様々な影響を、医師に伝えた患者さんの割合と改善した患者さんの割合との関係

身体的症状だけでなく、日常生活における悩みなども
医師に相談してみることが解決への第一歩

中原 剛士 先生

今回の調査結果を見ると、かゆみなどのアトピー性皮膚炎によって直接的に現れる症状については、多くの患者さんが医師に伝えて、問題を解決していることがわかります。一方で、「ストレスがたまる、イライラする」などの精神的な問題はほとんどの患者さんが医師に伝えておらず、そのため解決・改善できたと回答した患者さんも数名と非常に少ない結果となっています。ここで重要なのは、「なぜ、患者さんが皮膚症状は医師に伝えられるのに、精神的な問題は相談できないのか?」ということです。もし、患者さんが「直接的な症状以外は医師に相談することではない」と考えているようなら、ぜひ、その垣根を取り払い、伝えることが改善のためには重要であることを知って欲しいです。

トピック

アトピー性皮膚炎の治療は下記の3本柱が基本となります。薬物療法にも様々な選択肢がありますので、医師とどんな治療が症状や生活スタイルに合っているかを話し合ってみましょう。

  • 薬物治療
  • スキンケア
  • 症状を悪化させる要因への対策
×子どもの
アトピー性皮膚炎