アトピー性皮膚炎の症状が繰り返すのはなぜ?

ぶりかえすかゆみの原因は「皮膚内の炎症=隠れ炎症」おさえるべきは「隠れ炎症」です。

アトピー性皮膚炎は完治しない?

アトピー性皮膚炎は、なかなか症状が改善せず、一度良くなってもぶりかえしてしまうことも多いことから、治らない病気だというイメージがあるかもしれません。
でも、適切な治療を行えば症状が気にならない状態をキープすることが可能です。

一度よくなった症状が悪化するのは、どうして?

アトピー性皮膚炎の症状が悪化する要因には、汗や花粉などの体の外からの刺激だけでなく、ストレスのような精神的な負荷もあります。
進学や受験、就職などの人生の節目や環境の変化のタイミングで悪化してしまう場合も多い疾患です。
またアトピー性皮膚炎のかゆみや湿疹は、それ自体が患者さんにとって大きな負担で、ストレス要因となります。

アトピー性皮膚炎の経過と治療目標

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹を主病変とする疾患で1)、症状のある悪い状態と良くなった状態を繰り返します。
アトピー性皮膚炎は、一時的に良くなっても、皮膚の下でさまざまな細胞や伝達物質が関わる「炎症」という火種が残ってかくれている(かくれ炎症)ため再び悪い状態になって、繰り返してしまいます。
医師・薬剤師と一緒に、「炎症」という火種がない状態を目指しましょう。

1) 一般社団法人日本アレルギー学会/公益社団法人日本皮膚科学会/アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. アレルギ- 2021; 70: 1257-1342

アトピー性皮膚炎の経過と治療目標

一般社団法人日本アレルギー学会/公益社団法人日本皮膚科学会/アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. アレルギ- 2021; 70: 1257-1342より改変

ぶりかえす症状に悩む患者さんに、新たな治療選択肢

近年、アトピー性皮膚炎の病態解明が大きく進歩し、治療も進化してきています。
そのなかでも、アトピー性皮膚炎の「かくれ炎症」を引き起こす体内の原因物質をターゲットとしている抗体医薬品という新たな治療選択肢が注目されています。

治療選択肢は増えています

アトピー性皮膚炎の領域では、近年治療薬の開発が進み、保険診療で受けられる治療の選択肢が増えています。多くの患者さんが治療ゴールを現実的に目指せる時代になっています。

治療法によってそれぞれ対象年齢が異なるため、ご使用にあたっては医師・薬剤師の指示に従ってください。

外用薬・抗体医薬品・免疫抑制剤・光線療法

抗体医薬品とは?

そもそも抗体医薬品ってどんなもの?

私たちの体は、体内に細菌やウイルスなどの病原菌が入ってくると、それらを異物として排除する働きをもつ「抗体」というタンパク質をつくりだします。これが私たちがもつ免疫機能です。

この仕組みを利用して人工的につくられた薬が「抗体医薬品」です。特定の病気の原因物質を異物として排除するように働く「抗体」をつくって体内に入れることで、病気の予防や治療を⾏います。抗体医薬品は「⽣物学的製剤」ともいいます。

どうして注射なの?

抗体はタンパク質なので、経⼝で摂取すると胃や⼩腸で分解されてしまい、効果が得られません。
そのためほとんどの抗体医薬品は注射で投与します。
病院で注射してもらう以外にも⾃宅で⾃⼰注射することも可能で、通院の負担が減るメリットもあります。
⾃⼰注射の⽅法については、医師などの医療関係者の指導を受けることができるので安⼼です。

アトピー性皮膚炎における抗体医薬品

抗体医薬品とは?

アトピー性皮膚炎の炎症、かゆみ、皮膚のバリア障害は、いずれもサイトカインという物質が関係しています。

アトピー性皮膚炎の抗体医薬品は、炎症やかゆみなどの症状を引き起こす特定のサイトカインに直接作用し、そのシグナル伝達を阻害します。そのため、効率よく効果が得られるとともに、副作⽤の軽減も期待できます。

※体内の細胞同⼠の情報伝達を⾏う物質をサイトカインといいます。アトピー性⽪膚炎では主に2型炎症サイトカインが関わっているといわれています。

抗体医薬品とは? 抗体医薬品とは?

どんな種類があるの?

アトピー性皮膚炎に関係するサイトカインには、IL-4、IL-13、IL-5、IL-31、TSLPなどがあります。
現在ではIL-4、IL-13、IL-31を抑制・阻害する抗体医薬品が治療選択肢として登場しています。

治療選択肢はさまざまです。
ご自身の症状に合うものを、医師と相談しながら決めていくことが大切です。
専門の医師と相談してみましょう。

ご自身の状態について、悩みについて、希望について、医師と話してみましょう。

医師が正しい診断・評価を⾏うためには、患者さんの状態を正しく知る必要があります。
症状、経過、検査値など、医師はさまざまな⾯から診察を⾏いますが、それだけで患者さんの状態をすべて把握することはできません。

患者さんの困りごと、症状が患者さんの⽇常⽣活にもたらす負の影響などは、治療方針を検討する際に大切な情報ですが、患者さんから教えてもらうまで医師は知ることができません。

「こんなことを相談してもよいのかな?」と⼼配になることもあるかもしれませんが、思い切って話をしてみることが⼤切です。その際、「なりたい⾃分」「⽬指したい⾃分」についても考えて、先⽣にも共有してみましょう。

⽬指したい治療ゴールは患者さんによって異なります。治療ゴール達成には、⾃分に合った継続できる治療を⾒つけることが⼤切です。どんなことでもまず医師に相談してみましょう。

<相談の例>

 週に4日くらい、かゆみで夜中に起きてしまう日があります。

 日に当たると首の症状が悪化するのですが、どうしたらよいのでしょうか?

 どうしても掻くのを我慢できないときはどうしたらよいのでしょうか?

  かゆみのせいで勉強や仕事に集中できないときがあります。

 卒業式・発表会など大切なイベントに向けて、きれいな肌を保ちたいです。

ご自身のいまの状態を知ることが第一歩

まずはご自身のアトピー性皮膚炎のコントロール状態を知ることが大切です。
医師と相談する場合にもご使用いただけるADCTチェックリストで皮膚のコントロール状態を確認してみましょう。

アトピーのコントロール状態をチェック

ADCTは6つの簡単な質問に答えるだけで、
あなたのアトピー性皮膚炎がどのくらいコントロールできているかがわかります。
ADCTのチェック結果を先生に伝えましょう。

チェック結果のPDFをスマホ画面などに表示や保存することができます。

このテストの結果は、医師と相談する場合にもお使いいただけます。

このチェックリストはADCTに基づき作成されています。患者さん自身が測定して、疾患のコントロール状態をあらわすスコアです。アトピー性皮膚炎の状態を知るための1つの指標であり、診断をするものではありません。気になる症状がある場合は、医師にご相談ください。

※ ADCT(Atopic Dermatitis Control Tool;アトピー性皮膚炎のコントロール状態に関する調査票)

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