【監修】あたご皮フ科 副院長 江藤 隆史 先生
あなたの皮膚は、どんな状態ですか?
かゆみや乾燥、見た目などの悩みで、
ストレスを感じていないでしょうか。
「体質だからしかたがない」と諦めているなら
大きな誤解です。
皮膚疾患の治療は日々進化し、
なりたい皮膚になるための治療の選択肢は
増えています。
一緒に「よりいい皮膚」を
めざしてみませんか。
皮膚にまつわる悩みのなかでも、目に見えにくい厄介な「かゆみ」。どうして「かゆみ」が起きるんですか?
「かゆみ」が起きている肌では、実はこんなことが起こっています。
肌の「かゆみ」は、皮膚バリア機能の低下が一因って本当?
健康な皮膚は、皮膚表面の角層(角質層)がウイルスや細菌、微生物、花粉などの物質の侵入を防ぎ、さらに皮膚内部の水分を保持して潤いを保つ「皮膚バリア機能」によって守られています※1。しかし、この皮膚バリア機能の働きが低下すると、角層に隙間ができて乾燥が進み、さらに炎症の元となる物質が侵入しやすくなります※1。すると、本来は皮膚の奥にあるかゆみを知覚する神経が表皮近くまで伸びてきて過敏に反応※2し、ちょっとした刺激でもかゆみとして感じやすくなるのです。
正常なバリア機能の皮膚
【参考文献】
※1:「病気がみえる vol.14 皮膚科」(2020 、メディックメディア刊)
※2:アトピー性皮膚炎に関する情報(九州大学医学部 皮膚科学教室/厚生労働省科学研究費研究班(平成17~19年度)「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」より)
「かゆみ」のある肌は、炎症によって悲鳴を上げている
皮膚バリア機能が低下するとアレルゲンなどの物質が入り込みやすくなり、皮膚が炎症を起こします※1。炎症とは、身体が何らかの攻撃を受けたときにそれに対抗しようとする防御反応のこと※2で、その症状としてかゆみが生じているのです。かゆみのある箇所を掻いてしまうと皮膚表面の角層が傷つき、さらに皮膚バリア機能が低下して炎症の悪化につながります※1、3。加えて、掻くことで皮膚の知覚神経がより過敏に働く※3ため、掻けば掻くほど痒くなるという悪循環に陥ってしまうのです。
アトピー性皮膚炎の皮膚
【参考文献】
※1:「病気がみえる vol.14 皮膚科」(2020 、メディックメディア刊)
※2:国立国語研究所「『病院の言葉』をわかりやすくする提案」
※3:アトピー性皮膚炎に関する情報(九州大学医学部 皮膚科学教室/厚生労働省科学研究費研究班(平成17~19年度)「アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究」より)
アトピー性皮膚炎の状態を知りたい
アトピー性皮膚炎のコントロール状態チェック
皮膚科専門医を探したい
医療機関を検索皮膚バリア機能のほかにも皮膚には多くの役割があります。皮膚をよい状態に保ち、正しく機能させることが大切です。
皮膚の主な役割
皮膚は、身体全体を覆う最も大きな器官※1。
大人の皮膚の面積は約1.6m2※1といわれています。
人と外界とを隔てる臓器として、外からの刺激や異物を最初に遮断して私たちを守ってくれています※1。
そのほかにも、皮膚には多様な働きがあります。
皮膚が行っている機能や役割について知っておきましょう。
-
保護
ハウスダストなどのアレルゲンやウイルス、微生物、花粉などの物理的な異物の侵入を防ぎ、紫外線などの刺激から皮膚や体内を守ります※1。
-
体液保持
表皮の皮脂膜や角層の細胞間脂質(セラミドなど)、天然保湿因子の働き※1により、体内の水分が蒸発したり、透過したりするのを防いで体液を保持します※1。
-
分泌
アポクリン汗腺やエクリン汗腺※1の働きにより、汗を分泌します。また、脂腺※1の働きによって脂質(皮脂)を分泌し、皮膚表面を覆って乾燥を防ぎます※1。
-
排泄
皮膚は汗や皮脂などを常に排泄しています。汗はほとんどが水分ですが、アンモニアや尿素、乳酸といった老廃物の排出にも関わっています※2。
-
体温調節
発汗による熱の放散、血管の収縮や拡張の働きにより、体温を一定に保つよう調節※1、※3します。
-
知覚
触ったときに感じる触覚、痛みを感じる痛覚、温かい・冷たいという温度を感じる温覚や冷覚、かゆみやチクチクした感覚である掻痒といった感覚の受容器※1、※3として働きます。
【参考文献】
※1:「病気がみえる vol.14 皮膚科」(2020 、メディックメディア刊)
※2「みるよむわかる生理学―ヒトの体はこんなにすごい」,(岡田隆夫:著、2015、医学書院)
※3:エキスパートナース 2017 11月号
アトピー性皮膚炎の状態を知りたい
アトピー性皮膚炎のコントロール状態チェック
皮膚科専門医を探したい
医療機関を検索肌のトラブルを引き起こす疾患にはどんなものがありますか
肌トラブルの原因はさまざまだけど、特定の皮膚疾患が原因となっていることもあるの。
特にかゆみを伴い、日常的なストレスを生じやすい皮膚疾患には、アトピー性皮膚炎、痒疹(ようしん)、蕁麻疹(じんましん)などがありますよ。
かゆみの症状がある皮膚疾患はいくつかありますが、ここでは代表的な疾患として
「アトピー性皮膚炎」「痒疹(ようしん)」「蕁麻疹(じんましん)」について詳しくご紹介します。
自分に当てはまる箇所があったり、かゆみがなかなか改善しない不安を抱えていたりする方は、
思い切って医師に相談してみませんか。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹を主な症状とした、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気のことです。
名前に「炎」という文字が入っているように、皮膚の内部で「炎症」が起こっていて、皮膚が本来もっている「バリア機能」を低下させ、「かゆみ」を引き起こします。我慢できないほどのかゆみのせいで、皮膚をかきこわしてしまい、さらなるバリア機能の低下と炎症を引きおこす悪循環に陥ります。
アトピー性皮膚炎では、ちょっと良くなったと思ってもまたすぐに悪くなったりしますが、それは、皮膚の表面はきれいになっても、まだ「炎症」が皮膚の奥底に潜んでいるからかもしれません。
- 発症しやすいところ
- 比較的発症しやすいところ
湿疹は体の左右対称にあらわれることが多く、顔、首、頭、ひじ、ひざ、おなかや胸から背中にかけてなどが症状の出やすい部位です。年齢とともに湿疹の出やすい部位が変わっていきます。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の症状は、かゆみのある湿疹が特徴です。
「赤くなる」、「赤いブツブツ」、「ジクジクで液が出る」、「ボロボロ皮がむける」、といった湿疹があらわれます。長引くと皮膚が「硬くゴワゴワ」になっていきます。
【引用元】
アトピー性皮膚炎とは|アレルギーi
痒疹(ようしん)
痒疹(ようしん)とは
痒疹とはかゆみを伴う、孤立した小さなポツポツを特徴とする反応性の皮膚疾患 (1)です。
主な痒疹の症状
主な痒疹の症状として、以下の3つに分類されます。
結節性痒疹
直径1cmぐらいになる暗い褐色で、角質層が厚くて硬いドーム状やイボ状の結節(しこり)です。手足の外側(伸側)にできる場合が多いですが、胴体など広範囲にみられることもあります (1)。
多形慢性痒疹
高齢者に多く、わき腹、お尻、足の外側によくできます。引っかくことによってさらに広範囲に蕁麻疹のような紅斑ができることもあります (1)。
痒疹(いずれにも該当しないもの)
かゆみを伴う、孤立した小さなブツブツを特徴とする反応性の皮膚疾患 (1)です。
【参考文献】
(1) 佐藤貴浩ほか: 日本皮膚科学会ガイドライン 痒疹診療ガイドライン2020, 日本皮膚科学会雑誌. 2020; 130(7): 1607-1626
(2) 佐藤貴浩:medicina 57(11):1874-1875, 2020
蕁麻疹(じんましん)
蕁麻疹(じんましん)とは
蕁麻疹は、皮膚にかゆみを伴う赤みを帯びたふくらみ(膨疹)があらわれ、しばらくすると消えてしまう皮膚疾患です。1つの膨疹は、通常1日以内に跡形なく消えてしまいます。この特徴が大切です。この症状は、主にヒスタミンという化学物質が何らかの刺激で、皮膚の肥満細胞から放出されることによって生じます。
蕁麻疹には、原因がわからない特発性の蕁麻疹、アレルギーや温度、光などの刺激によって生じる刺激誘発型の蕁麻疹などがあり、蕁麻疹と比べて皮膚の深い部分が腫れる血管性浮腫も蕁麻疹の一種と考えられています。また、症状が続く期間によって、「急性」と「慢性」にわけられます。
特発性の慢性蕁麻疹の膨疹
特発性の蕁麻疹とは
特発性の慢性蕁麻疹では、かゆみを伴い、皮膚に赤みを帯びたふくらみ(膨疹)が一時的にあらわれることがあります。膨疹は通常、数十分から数時間以内に消えて、通常1日以内に跡形なく消えてしまいます。稀に2~3日続くこともあります。
急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹の違い
ヒスタミンが放出される原因がわからない蕁麻疹を「特発性蕁麻疹」と呼び、その中で一過性の膨疹が繰り返しあらわれる状態が6週間以上続くものを「特発性の慢性蕁麻疹」、6週間未満の場合に「特発性の急性蕁麻疹」と呼びます (2)。蕁麻疹の約6割は、原因がわからない特発性の蕁麻疹であるといわれています (3)。
また、最近では、特発性の慢性蕁麻疹には2型炎症と呼ばれる炎症が関係する可能性があることがわかってきました。
【参考文献】
(1) Marzano AV, et al. Curr Derm Rep. 2013; 2: 18-23
(2) 秀 道広ほか:蕁麻疹診療ガイドライン 2018. ⽇⽪会誌 2018;128(12): 2503-2624
(3) Saito R, et al. J Dermatol. 2022: 49(12); 1255-1262
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医療機関を検索かゆみは日常に影響を及ぼすことも。もし「かゆみ」がなかったら?
痛みに比べて、かゆみはたいしたことがないものととらえられがち。
でも、実際に経験すればわかるとおり、かゆみが続くのはとてもつらいですよね。
では、もしこのかゆみがなくなったら?
勉強やスポーツ、仕事のパフォーマンスが上がったり、諦めていたことを楽しめたりするとしたら、
あなたはどんなことがしたいですか?
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医療機関を検索勉強・受験
スポーツ
仕事
睡眠
旅行・レジャー
なりたい皮膚に近づけるための治療の選択肢が増えています。
次の動画ではアトピー性皮膚炎について
藤田医科大学 ばんたね病院
総合アレルギー科 教授 /
総合アレルギーセンター センター長 /
藤田医科大学医学部
先端アレルギー免疫共同研究講座 教授
矢上晶子先生に
「アトピー性皮膚炎」についてお聞きしました。
矢上 晶子 先生
藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギー科 教授/ 総合アレルギーセンター センター長
/藤田医科大学医学部 先端アレルギー免疫共同研究講座 教授
【資 格】
医学博士 / 日本皮膚科学会専門医 / 日本アレルギー学会専門医・指導医
【所属学会】
日本アレルギー学会理事/日本皮膚免疫アレルギー学会副理事長・代議員/日本ラテックスアレルギー研究会理事長/日本香粧品学会理事/アトピー性皮膚炎治療研究会世話人/日本接触皮膚炎研究班班長/日本小児臨床アレルギー学会代議員/日本アレルギー学会東海支部代議員
【その他】アレルギー疾患対策推進協議会委員/薬事・食品衛生審議会臨時委員/消費者安全調査委員会専門委員/ 愛知県医師会男女共同参画委員会委員/日本皮膚科学会キャリア支援委員会協力委員
【研 究】
アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、接触皮膚炎、ラテックスアレルギー、蕁麻疹などアレルギー疾患全般の診療および研究を行っています。
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6つの質問に答えて、
アトピー性皮膚炎の
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アトピー性皮膚炎の症状や生活の質(QOL)を把握するためのツール※を使って、
あなたの困っていることを簡単に医師に伝えられます。
6つの質問に回答して医師に相談してみましょう。
コントロール状態チェック
※ADCT(Atopic Dermatitis Control Tool;アトピー性皮膚炎のコントロール状態に関する調査票)
まずは、お近くの医師に
相談しましょう!
かゆみを伴う皮膚の症状が続く場合、自己判断で対処するのは避け、
早めに専門医に相談することをおすすめします。
かゆみは、アレルギーや感染症、乾燥などのトラブルを教えてくれる大事なサイン。
放置すれば悪化する可能性もあるため、症状に気づいたらすぐに受診し、
正しい診断と適切な治療を受けましょう。
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