喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)のオーバーラップ

咳や痰、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、息切れ、呼吸困難などの症状が長く続いている患者さんの中には、喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の両方の特徴を併せもつ方も多くみられます。
そのような状態は喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma COPD Overlap)、頭文字をとってACO(エーコまたはエイコ)と呼ばれています。

ACOの定義
慢性の気流閉塞を示し、喘息とCOPDのそれぞれの特徴を併せもつ病態
ACO

浅井一久ほか:日内会誌 104:1082-1088, 2015より作図

ACOの有病率

ACOの有病率について、国内で過去に喘息と診断された患者さんを対象とする研究では、27.1%とされています。一方、COPDと診断された患者さんのACOの有病率は、4.2~49.7%とされています。この有病率については、診断の定義や基準、対象者の年齢、地域などが研究によって異なり、各研究間によって差があります。

ACOの発症年齢

発症年齢は喘息と比較すると高め、COPDと比較すると低めか同じくらいとされています。

ACOの特徴

ACOの症状

ACOの主な症状は、咳、痰、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、息切れ、呼吸困難で、喘息とCOPDで共通しており、ACOに特徴的な症状はありません。
ただし、喘息やCOPDの患者よりも頻度が高く、症状も強く出るとされています。

  • 喘息らしい症状

    • 症状が時間とともに変化する(日、週、季節あるいは年によって異なる)。
    • 症状は夜間や早朝に悪化する。
    • 発作のトリガーとして運動、感情、埃やアレルゲンへの曝露などがある。
    • 自然にあるいは治療により改善する。
  • COPDらしい症状

    • 特に労作時に生じる慢性の息切れ、呼吸困難などの症状。
    • 多少はいい日もあれば悪い日もあるが、症状は持続している。
    • 慢性の咳、痰。
    • 主に気道感染(風邪)によって急激に悪化しうる。
    • 一般に治療しても年単位でゆっくり進行・悪化することが多い。
    • 軽症だと自覚症状に乏しいことがある。
  • ACOの症状

    • 喘息あるいはCOPDで、それぞれCOPDあるいは喘息らしい症状を併せもつ。
    • 慢性的な息切れを自覚することもあるが、症状の大きな変動もありうる。
    • 治療により症状は軽減されるが、年単位で症状が進行・悪化することが多い。

ACOの診断

ACOは診察や、以下のようなさまざまな検査を組み合わせて多面的に評価されます。

問診 喫煙歴の有無、喘息やCOPDの症状、アレルギー歴(アトピーやアレルギー性鼻炎)、治療薬の使用状況などについて確認します。
身体所見 聴診で喘鳴の有無などを確認します。
呼吸機能検査
(スパイロメトリー)
呼吸で吐き出す空気の量や流量を測定し、息を吸う力、吐く力、酸素を取り込む能力などを調べる検査です。
呼気一酸化窒素
(FeNO)
濃度測定検査
気道の炎症の程度を調べる検査です。
血液検査 血液中の好酸球の数やアレルギーの原因などを調べる検査です。
画像検査 X線やCTなどの画像を用いて、胸部臓器等の形態的変化を調べる検査です。

ACOの治療

ACOの治療では、喘息とCOPD両方の治療を行うことを基本に、症状・病態を管理することを目標にしています。

ACOの管理目標

  • 症状およびQOL(クオリティオブライフ)の改善
  • 呼吸機能の改善と気道炎症の制御
  • 運動能力と活動性の向上・維持
  • 加齢による呼吸機能の低下や疾患進行を抑える
  • 増悪の予防
  • 合併症や依存症の予防と治療
  • 寿命(健康寿命)の延長
  • 治療薬の副作用の回避

上の目標を達成するために、症状・病態に合わせて、さまざまな薬物療法や、非薬物療法を行います。

■薬物療法

①吸入療法

喘息やCOPDと同様に、吸入薬として気道の炎症や気道過敏症を抑える薬と気管支を広げる薬の併用療法が原則です。患者さんの状態や重症度によって使用する薬剤は異なります。

②生物学的製剤

アレルギー関連の気道炎症をターゲットとした注射薬を投与することで炎症を抑えます。

③喀痰調整薬

痰を出やすくしたり、気道の粘膜の状態をよくすることで、急激な悪化を防ぐ可能性が期待されます。

■非薬物療法

①危険因子の回避

アレルゲン、タバコの煙、大気汚染などの曝露、気道感染、薬物、ストレス、過労など、喘息とCOPD両方の危険因子を回避します。

②ワクチン

インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの併用接種で感染症による悪化を防ぎます。

③このほか、呼吸リハビリテーション、全身併存症(胃食道逆流症、骨粗鬆症、虚血性心疾患など)の管理・治療、酸素療法・換気補助療法などがあります。

ACO患者さんの症状・病態はさまざまです。気になる症状がある場合は、治療法について医師に相談しましょう。

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参考:一般社団法人日本呼吸器学会 喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と
治療の手引き第2版作成員会. 喘息とCOPDのオーバーラップ
(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き 第2版 2023, 一般社団法人日本呼吸器学会, 2024