【監修・コメント】
大塚篤司先生(近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授)
【調査協力・監修・コメント】
特定非営利活動法人(NPO法⼈)日本アトピー協会
【調査協力】株式会社JTB
旅行は日常から解放されて、初めての土地や
文化を体験できるチャンス。
でも「自分や家族にアトピーがあるとちょっぴり心配」という声も。
この記事では、「アトピーを気にせず旅行を楽しむために
どんな工夫をしているのか知りたい!」という要望にお応えして、
日本アトピー協会のサイトによせられた回答をご紹介します。
あわせてアトピー性皮膚炎の専門家 大塚先生からも
アドバイスをいただきましたので、次の旅行の計画にぜひご活用ください。
このコンテンツは、日本アトピー協会が行ったwebアンケートおよびwebインタビュー(2024年4~9月)をもとに作成しました。
【定量調査】日本アトピー協会のサイトによせられた50名のwebアンケートの回答をまとめた(2024年4~5月)
【定性調査】定量調査に参加し、定性調査への協力を得た3名を対象としたwebインタビュー(2024年8~9月)
【参加者の属性】日本アトピー協会のwebアンケートに参加した方50名(男性10名、女性40名)で、年齢は20~60代、ご自身がアトピー性皮膚炎の患者の方が32名、ご自身も家族も患者さんの方が7名、ご家族が患者さんの方が11名という内訳でした。
92%が旅行の経験があり、
64%は年に1回以上旅行をしている
と回答しました。
これまでの旅行経験をお聞かせください(国内・海外旅行・日帰り旅行含みます)
(回答:50人)
これまでの旅行経験の満足度を
聞かせてください
(回答:50人)
【定量調査】日本アトピー協会のサイトによせられた50名のwebアンケートの回答をまとめた(2024年4~5月)
これまでの旅行経験についてのアンケートでは、旅行の経験がある方は全体の92%でした。「年に3回以上旅行している」が26%、「年に1~2回」が38%でした。そして旅行経験の満足度は「ほとんど満足できた」が66%でした。アンケートに回答された多くの方が旅行を楽しまれている実態が分かりました。
「アトピーのために旅行の内容を制限
している」
と回答した方は42%でした。
旅行を計画する際に
アトピー性皮膚炎のために
旅行内容を
制限することはありますか?
(回答:50人)
旅行を計画する際に
アトピー性皮膚炎のために
旅行内容を制限することはありますか?「はい」の場合は
最も当てはまるものを選択してください
はい、観光や
アクティビティを考えるとき
はい、季節や
時期を考えるとき
はい、宿泊施設を
考えるとき
温泉の泉質
いいえ、
特に制限しない
(回答:46人)
【定量調査】日本アトピー協会のサイトによせられた50名のwebアンケートの回答をまとめた(2024年4~5月)
「旅行を計画する際にアトピー性皮膚炎のための旅行内容を制限することはありますか」には、58%が「いいえ(=制限してない)」、42%が「はい(=制限している)」と回答しました。具体的に制限している内容は、観光やアクティビティ(20%)、季節や時期(6.7%)、宿泊施設(26.7%)などでした。
半数以上の方が特に制限を感じずに旅行を楽しめている一方で、半数近くの方がアトピーへの影響を考えて、いつ、どこに行くか、旅先でなにをするか、宿泊施設をどこにするか等、事前にいろいろと考えている実態が浮かび上がりました。
旅行を楽しむために工夫している
ことがあれば教えてください。
スキンケア、お薬
スキンケアはシャンプー、トリートメント、ボディソープを含めて全て普段自宅で使っている物を小分けにして持参する
薬など現地で手に入らないもの、代替えがないものだけは忘れないよう持っていく
体調管理
自分の体調を整える
旅行までに体調管理や食事制限、日焼け対策等して、万全な状態で行けるようにする
事前にコンディションを整えるようにし、もちろん薬も常備して旅行をする
日焼け対策
日焼け止め・保湿ケア用品
必ず帽子と日傘を持っていく
アームカバーを持っていく
季節を問わず、つばの広い帽子をかぶる。夏場でも長袖を着る
行き先・旅程など
涼しいところへ行く
日程に余裕を持たせ、せっかちにならないこと
過ごしやすい季節、服、髪型、荷物の少なさ等、ストレスをできる限り排除する
痒み対策
温泉の湯上がりにはすぐに保湿する
乾燥しないようにする
汗をかき過ぎない
暑い時期や場所には、保冷剤や凍らせたペットボトルを持っていき、痒い箇所を冷やす
その他
移動中、車内で少し仮眠をとる。トイレに行って1人になる時間を少し作ってリラックスする
アトピーのことを忘れられるぐらい楽しむ
【定量調査】日本アトピー協会のサイトによせられた50名のwebアンケートから自由記載回答をまとめた
旅行を楽しむために工夫していること(自由回答)では、いつも使っているスキンケア用品やお薬を小分けにして持っていく、旅行までに体調を整えるといった回答があり、アトピーが悪化しないように事前に準備されていることが分かりました。旅先でも、日焼けや痒み、疲れ対策など、いろいろな工夫をされているようです。
30代 女性 Oさん
(子育て中)
学生時代は旅行や合宿の際に、
荷物が増えることや翌朝の肌の状態を心配していました。
でも今では、沖縄やバリ島のリゾートを
楽しんでいる自分がいます。
学生時代は旅行や合宿の際に、
荷物が増えることや翌朝の肌の状態を心配していました。
でも今では、沖縄やバリ島のリゾートを
楽しんでいる自分がいます。
旅行の経験
コロナ前までは年に数回旅行に行っていました。
バリ島などのビーチリゾートが好きです。
日焼けに対してはそれほど気にせず楽しむことができています。
旅行の満足度
旅行は楽しめていますが、温泉は他人の目が少し気になるのと、
かゆみを感じることもあるため、少し満足度が下がります。
次に温泉に行く場合は、貸切風呂を利用したいなと思っています。
旅行の計画
乾燥した寒い地域は避けています。
宿泊施設はダニやほこりを気にするけど、それ以外はあまり気にしていません。
食物アレルギーがあるので、カニは食べないようにしています。
旅行中について
アトピーのことは考えないでゆっくりすることも大切かも。
リゾート地でのんびり過ごすと、日頃のストレスが緩和されて、
肌へもいい影響があると感じています。
20代 女性 Hさん
(メーカー・技術職)
学生時代には、両親に反対されましたが
主治医に相談したうえで海外留学もしました。
最近ではビーチリゾートに新婚旅行に行きました。
アトピーを理由に諦めないでほしいなとは思います。
学生時代には、両親に反対されましたが主治医に相談したうえで海外留学もしました。
最近ではビーチリゾートに新婚旅行に行きました。
アトピーを理由に諦めないでほしいなとは思います。
旅行の経験
旅行もよく行きますが、仕事でもベトナムなどに海外出張することがあります。
食物アレルギーと喘息があるので、アナフィラキシー対策用の薬やふだん使用している薬を忘れずに持参します。
旅行の計画・
情報収集
寒いところは乾燥するので旅先にはあまり選びません。
効能の強い温泉は皮膚への刺激を考えて避けることが多いかな。
旅行先の気温と湿度、宿泊先のホテルで食事のアレルギー表示があるか、
アメニティにどのようなものが使われているかなどを事前に調べます。
旅行中について
新婚旅行で新品の水着が肌に合わなくてかぶれてしまったことがあるのですが、それ以外はビーチリゾートでも日焼け止めを塗ったりして、海を楽しむことができています。
20代 女性 Kさん
(元看護師・現在は別のお仕事)
旅行に関するアトピーの悩みは人それぞれ。
これは避けたいなと思うポイントを
自分で把握することで、
無理せずに旅を楽しむことができると思います。
旅行に関するアトピーの悩みは人それぞれ。
これは避けたいなと思うポイントを自分で把握することで、無理せずに旅を楽しむことができると思います。
旅行の経験
泊りがけの用事があるときに、ついでに観光もするスタイルです。おいしい食べ物があるところが好きですね。温泉やビーチなど肌をみせるところは好んでは行かないです。温泉は数年に1回ぐらい。それでちょっと肌にいい温泉があるとうれしいですが、そこを目当てで行くとかはないですね。
旅行の計画・
情報収集
旅行先でも、いつもやっていることをやっていれば大丈夫って思っています。
旅先の情報はネットの口コミなども参考にしますが、「アトピーが悪化した」など極端な口コミが多くなければ気にしないですね。
旅行中について
宿泊先のシーツや、パジャマ、石鹸なども使い心地がよければ、普段の生活に取り入れることもあります。ボディソープなどは日常でかなり調べて色々試して自分に合うものが経験上で分かっているので、「行ったら何とかなる」と思ってます。
【定性調査】定量調査に参加し、定性調査への協力を得た3名を対象としたwebインタビュー(2024年8~9月)
旅行に行くとき、アトピーで気をつけることはありますか?
とにかく楽しむ!ただし症状が悪化したら医療機関を受診してください。
あまり心配するよりも、行きたいところへ行って、やりたいことをやって、まずは楽しむことが大事です。「アトピーの症状が良くなる行き先」にこだわると、選択肢が狭まるだけでなく、思わぬアトピービジネスなどの落とし穴があることも。旅行先は「アトピーがあってもなくても自分や家族が行きたいところ」で決めて良いと思います。
旅行に行くときにはぜひコンディションを整えていただいて、ついでに治療へのモチベーションをあげていただくとうれしいです。旅先には治療薬を忘れずに持っていってくださいね。そして旅行中や旅行後にアトピーが悪化した場合は、我慢せずに医療機関を受診してください。
旅行に行く前に症状を良くしておきたい。
でも、お医者さんにアトピーと関係のない旅行の話をしてよいものか、
少し迷います。
「やってみたいこと」を医師と共有することで、新たな治療目標がみえてくることがあります。
待合室にも患者さんがいっぱいいて、お医者さんも忙しそう…と思うと、アトピーと直接関係ない話をするのをためらう方もいるかもしれませんね。ですが、やりたいことを医師に伝えることで「じゃあ、今よりも一段階、上を目指した治療をしてみよう」と新しい治療目標がみえてくることもあります。例えば「ジュクジュクしていた肌がカサカサまで改善しているけれど、旅先で悪化するのが心配」なのであれば、「旅行前にサラサラ・すべすべの状態になるまで治療を頑張ってみよう」という感じですね。旅行の話をきっかけに医師と患者さんのコミュニケーションが深まるメリットもあると思います。
アトピーの状態をお医者さんにうまく説明できません。
予約のときに希望を伝える、症状スコアをつけておく、など工夫を。
「ちょっとアトピーで困っていることがあって、いつもより時間を取ってもらって相談したい」「〇〇という治療法について聞きたい」という場合には、予約のときに伝えてもらうと医療機関のほうでも時間の調整や準備がしやすいと思います。
また、ご自身のアトピーの状態を記録するアプリなどを使って、日頃つけておいたスコア(例:ADCTスコア、PROスコア)を主治医の先生にみせるのもよい方法です。重症度とともに「1年のうちにどの季節で悪化するのか」がみえてくると、医師としても治療強化のタイミングを探ることができますので、患者さんのライフスタイルにあった治療法を提案しやすいと思います。
もし治療法について主治医の先生とお話が合わないようなら、ご自身に合った医療機関をもう一度探すことも決して悪いことではありません。成人の場合は、皮膚科とアレルギーの専門医、小児の場合は小児科とアレルギーの専門医の資格をお持ちの先生に診ていただくと良いと思います。