子どものアトピー性皮膚炎における治療の重要性

子どものアトピー性皮膚炎|重症度にかかわらず早めの治療を1)

乳幼児のころに最重症と判断された患者さんでも、適切な治療を受ければ数カ月で改善することも期待できます。そのあとは、スキンケアを中心とした治療努力を続けて皮膚状態を一定期間良好に保つことができれば、治療薬を少しずつ減らしていくことの検討ができるようになります。

軽症の患者さんの中には、ステロイドの塗り薬など病院での治療を特に行わなくても、湿疹が自然に治ってしまう人もいます。しかし、最初が軽症であったとしても何の治療もしないと、湿疹がどんどん悪くなって重症になってしまう可能性もあります。
また、離乳食開始前の乳児期の前半に湿疹ができた赤ちゃんは、食物アレルギーを発症する確率が高いので、軽症でも早めに治療した方がよいでしょう。

アトピーが他のアレルギーのきっかけに|アレルギーマーチとは2)

乳幼児期のアレルギーは、成長するにつれて、いろいろなアレルギー症状が出たり消えたりしていくことが大きな特徴です。これをマーチ(行進曲)にたとえて、「アレルギーマーチ」と呼んでいます。

たとえば、赤ちゃんのときにアトピー性皮膚炎になると、続けて食物アレルギーを発症し、1~5歳ごろに気管支ぜん息になり、小学生になるころからアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎になる、というケースがみられることがあります。

もちろん、個人差はありますし、全員が同じルートをたどるわけではありませんが、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんは4人に1人がぜん息になり、ぜん息の子の2人に1人はアトピー性皮膚炎があるか、以前になったことがある、といわれています。

子どものアトピー性皮膚炎における治療の目標

アトピー性皮膚炎では、次の状態になることを目標に治療が行われます。

1. 症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、その状態を維持する
2. このレベルに到達しない場合でも、症状は軽微または軽度で、日常生活に支障をきたすような急な悪化が起こらない状態を維持する

「海やプールで遊ばせてあげたい」「園や学校の行事を楽しませてあげたい」「子どもも親もぐっすり眠りたい」など、お子さまやご家族にとっての具体的な目標を持つことも大切です。お子さまやご家族でどのような治療の目標を持ちたいかを話し合い、主治医の先生に伝えてみましょう。

子どものアトピー性皮膚炎における疾病負荷

病院で治療が必要な理由と疾病負荷について

アトピー性皮膚炎の患者さんが病院を受診する大きな理由は、かゆみの症状がひどいことです。かゆみがひどく、そのために夜眠れなかったりすることも少なくありません。

夜十分に眠れないと、昼間に眠気が残り集中力が低下してしまうため、勉強や日常生活で十分な力が発揮できなくなることがあります。また夜眠れないことが続くと体の中で作られる成長ホルモンの量が減ってしまい、身長の伸びが悪くなってしまうこともあります。
さらにかゆみによって患者さん本人だけでなく、世話をする家族も眠れなくなってしまうことがあります1)

患者さんにとって、生活や精神、仕事、学業、経済などのさまざまな面でアトピー性皮膚炎が重荷(疾病負荷)となることもありますが、医師は、きっとたくさんの解決方法を知っています。ぜひ、今、負荷に感じていることを、まずは医師に話してみる、その一歩から踏み出してみましょう。

参考)一般社団法人日本アレルギー学会/公益社団法人日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. アレルギ- 2021; 70: 1257-1342
高増哲也. 日小ア誌. 2022; 36: 28-34
Ramirez FD, et al. JAMA Dermatol. 2019; 155: 556-563

1)大矢幸弘ほか. 子どものアレルギー アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・ぜんそく 文藝春秋. 2017. p63-64
2)独立行政法人環境保全機構. ぜん息悪化予防のための小児アトピー性皮膚炎ハンドブック. 2009. p3