一般的な治療
一般にどのような治療が勧められているの?
結節性痒疹の原因となる基礎疾患がある場合、まずはその疾患に対する治療を行います。血液透析や慢性肝疾患が原因の時にはナルフラフィン塩酸塩という薬を用いることがあります2) 。
基礎疾患の有無にかかわらず、勧められている最初の治療はスキンケア、ステロイドの塗り薬です。

スキンケアって、どんなことをすればいいの?
ガイドライン2)では、2項目のスキンケアが紹介されています。
どんなことに気を付ければいいの?
-スキンケアの例2)
1. 皮膚の清潔〜毎日の入浴、シャワー
- 汗や汚れは速やかに落とす。しかし、強くこすらない。
- 石鹸・シャンプーを使用するときは洗浄力の強いものは避ける。
- 石鹸・シャンプーは残らないように十分にすすぐ。
- かゆみを生じるほどの高い温度の湯は避ける。
- 入浴後のほてりを感じさせる沐浴剤・入浴剤は避ける。
- ナイロンタオルや硬めのタオルの使用を控える。
2. その他
- 室内を清潔にし、適温・適湿を保つ。
- 新しい肌着は使用前に水洗いする。
- 洗剤はできれば界面活性剤の含有量の少ないものを使用する。
- 爪を短く切り、なるべく掻かないようにする。
- 手袋や包帯による保護が有用なことがある。

ステロイド外用薬
ステロイド外用薬の治療って、どんなもの?2)
ステロイド外用薬は、塗り薬です。第一選択薬、すなわち最初に用いる薬剤とされています。ブツブツができている部位と、その周囲に塗って治療します。ステロイド外用薬は強さによってランク分けされていますので、症状に応じたランクを用います。ステロイド外用薬で効果が不十分なときは、ほかの治療法への変更を考えます。
ほかには、どのような治療があるの?2)
症状に応じた、さまざまな治療があります。例えば、かゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬で治療することがあります。また、結節性痒疹のメカニズムにアプローチする注射薬(抗体医薬品)も使えるようになりました。
抗体医薬品
抗体医薬品とは?
私たちのからだは、体内にない異物を排除する抗体というタンパク質をつくり出して病気を防いでいます。この仕組みを利用して、病気の原因となっている物質に対する抗体をつくり、体内に入れ、病気の予防や治療をおこなう薬が「抗体医薬品」です。抗体医薬品は、生物学的製剤ともいいます。
病気の原因となる物質のはたらきをピンポイントで狙い撃ちするので、高い治療効果と副作用の軽減が期待できます。
結節性痒疹では抗体を体内に入れ、病気の一因とされる物質が働かないようにします。
保湿剤
保湿をすることもあるの?
はい。保湿剤だけで結節性痒疹が治る、というわけではありませんが1,2)、一般に皮膚が乾燥して痒みが生じ、搔きむしってしまうと、皮膚のバリア機能が壊れてしまいます。それに伴い、結節性痒疹の症状も悪化してしまう可能性があります。特に、乾燥しやすい肌質の人やアトピー性皮膚炎と合併している場合などは保湿剤を使うことが多くなります。
保湿剤にはいくつかの種類があります。代表的な3種類の特徴は以下の通りです3,4)。皮膚の状態や患者さんの好み(テクスチャ―、塗り心地)などで、使われる保湿剤が決まります。
ワセリン系 | 油分が主体の薬です。皮膚の表面に膜をつくり、水分の蒸発を抑えます。 肌に対する刺激が少なく、炎症のある皮膚にも使えます。べたつくことがあります。 |
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ヘパリン類似物質系 | 保湿力が高いです。べたつきも少なく、塗りやすいです。 においを感じることがあります。 |
尿素系 | 保湿効果が高く、べたつきも少ないです。 炎症のあるところに塗ると、刺激感を感じることがあります。 |
他の治療薬と併用されることが多いです。
1) 佐藤貴浩:日本医事新報 5047:18-26, 2021
2) 佐藤貴浩ほか:日本皮膚科学会ガイドライン 痒疹診療ガイドライン2020, 日本皮膚科学会雑誌 130(7):1607-1626, 2020
3) 清佳浩監修:よくわかる 最新医学 皮膚の病気. 主婦の友社, p.56-57, 2018
4) 五十嵐敦之:別冊「医学のあゆみ」 アトピー性皮膚炎(古江増隆編). 医歯薬出版, p.94‐97, 2009